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料理人が解説!丸大豆と脱脂加工大豆、丸大豆醤油と普通の醤油 | 正しい知識で自分にあった醤油を選ぶ

 

丸大豆

以前ご紹介した濃口しょう油と薄口しょう油の違い、これは製造工程の違いによる塩分濃度、色、香りの違いでした。

 

このうち濃口しょう油は原料である大豆の違いによってさらに丸大豆まるだいずしょう油とそれ以外の普通のしょう油に分かれます。

 

丸大豆しょう油はその名の通り丸大豆を使ったしょう油。対して普通のしょう油は脱脂加工大豆だっしかこうだいずを使って作られています。

 

脱脂加工大豆…なんだか工業的なあやしい名前…普通の大豆とは違うのか?そもそも自分がいつも使っているしょう油はどっちの大豆を使っていたのかわからない…。

という方もいるかと思います。

 

そこでこの記事では丸大豆しょう油と普通のしょう油の違いについて解説します。

 

現役の料理人である僕が両方のしょう油の原料、そして味わいの違いについて書いていきます。

 

実際に両方をなめ比べたしょう油テイスティングもしました。

 

この記事を読んでいただければ丸大豆しょう油と普通のしょう油の違い、原料である丸大豆と脱脂加工大豆の違いについてわかります。

 

みなさんがいつも買っているしょう油、どちらかわかりますか?参考にしてください。

 

 

丸大豆しょう油と普通のしょう油の違い

にぎり寿司としょう油



まずは原料となる大豆について解説します。

 

丸大豆とは?

丸大豆とは何も手を加えていない丸ごとそのままの大豆のことです。

 

丸大豆を使ったしょう油は普通のしょう油との違いをアピールするために商品の名前で「丸大豆しょう油」などとなっていて、しょう油の原材料表示では単に「大豆 」と書かれています。

丸大豆しょう油の原材料表記

 

もともと全てのしょう油は丸大豆を原料として作られていましたが、戦前から戦後にかけて登場した脱脂加工大豆にとって代わられ、今ではしょう油の生産量の2割ほどが丸大豆を原料としたしょう油となっています。

 

丸大豆の特徴は油を多く含んでいることです。

しょう油の醸造じょうぞうでは油ごと使われるのでこれが丸大豆しょう油の味わいに影響してきます。

 

脱脂加工大豆とは?

脱脂加工大豆とは丸大豆から大豆油を絞って取り除き、タンパク質などの成分を調整した大豆のことです。

 

脱脂加工大豆を使ったしょう油はいわゆる普通のしょう油のことで、原材料表記では「脱脂加工大豆」と表記されています。 

脱脂加工大豆を原料とした普通の醤油の原材料表記

 

現在ではしょう油の原料の主流となっていて、全生産量の8割が脱脂加工大豆を使ったしょう油になっています。

 

脱脂加工大豆は平たくフレーク状になっているので水を吸いやすく分解しやすいのが特徴です。

そのため安いコストで短時間にうま味の強いしょう油を大量に作ることができます。

  

丸大豆しょう油の特徴

丸大豆しょう油の特徴は

  • 鮮やかで透明感のある赤い色
  • まろやかな香りと味わい

この2つです。

 

丸大豆しょう油

 

鮮やかで透明感のある赤い色

大豆にはもともと20%ほどの油が含まれているのですが、丸大豆を原料としたしょう油はこの油も含めてそのまま醸造じょうぞうします。

 

するとしょう油のもろみの上に油がたまって、空気ともろみの接触を防ぐカバーのような役割をします。

 

その結果しょう油の酸化が防止されて赤く透明感のあるしょう油が出来上がります。

 

まろやかな香りと味わい 

丸大豆に含まれていた油は熟成期間中にグリセリンへと変化します。

 

グリセリンは甘く溶けやすい特徴をしているので、これがしょう油の中に溶け込みまろやかで角のない香りと味わいになります。

 

しょう油に含まれていた油は最終的にはもろみを絞った後にしょう油油しょうゆあぶらとして 浮き出てきたところで取り除かれます。

丸大豆しょう油
キッコーマン
 

 

普通のしょう油の特徴

脱脂加工大豆だっしかこうだいずを使用した普通のしょう油の特徴は

  • キレのある香り
  • 強いうま味 

この2つです。

 

脱脂加工大豆を原料とした普通のしょう油

 

すでに油を搾り取った大豆で作るので丸大豆しょう油のようなまろやかさはありませんが、うま味の元となるタンパク質を多く含んだ脱脂加工大豆によって強いうま味を含んでいます。

 

脱脂加工大豆を使ったしょう油のメリットは何と言っても旨味を多く含んだしょう油を低コストで素早く安定的に大量生産できることです。

 

大量消費の現代社会において脱脂加工大豆を使ったしょう油の生産は理にかなっていると言えます。

しぼりたて生醤油
キッコーマン
 

 

丸大豆しょう油と普通のしょう油を比べてみた

実際に両方のしょう油にどれだけの違いがあるのか舐めて(飲むのはキツイので)比べてみました。

しょう油テイスティングです。 

 

  • やわらかで奥深い香り、揺らすとナッツのような香り。余韻よいんは7秒程度。
  • 甘み、酸味が一体となり柔らかい味わい。塩辛さはおだやか。
  • つややかで透明感が高く赤い色合い。
  • はっきりとしたクリアなしょう油の香り、こうばしさ。余韻よいんは7秒程度。
  • すっきりとした味わい。甘み酸味はおだやかで塩辛さがはっきりしている。
  • つややかで透明感が高く赤い色合い。

 

味わいと香りははっきりと違いがわかりました。同じように比べてみれば誰でもわかるくらいです。

 

色艶ははっきりとした違いがわからないですね。

 

丸大豆しょう油は大豆の油によって酸化が防止されて赤色が鮮やかで透明感が高いということだったのですが実際にはそこまでの差はありませんでした。

 

味や安全性には大差ない

丸大豆で作った醤油は高級品で美味しい、その一方で脱脂加工大豆を使った醤油は大豆油の絞りカスで作った安物、こういったイメージを抱いている人がいますが実は全くの間違いです。

 

実際には両方のしょう油は味に大差がありません。

 

まろやかさ、うま味の強さの違いなどはありますがそれは個性の範囲なので、結局のところ自分の好みで選べばいいのです。

 

脱脂加工大豆のネガティブイメージ

一方で脱脂加工大豆の安全性にネガティブなイメージを抱いている人がいるのも事実。 

 

それはおそらく大豆油を採るときに使われるヘキサンに原因があります。

 

大豆から油を搾り採るといっても砕いてただ絞るだけではほんの少しの油しか採ることができません。

そこでヘキサンという溶剤に浸して油分を溶かし出すのです。

 

ヘキサンとは?

このヘキサンはガソリンなどに含まれる石油由来の溶剤で灯油の匂いがします。

 

それ自体は有害な物質なのですが、食品添加物として使用する場合は食品に残留物が無い場合(除去される場合)だけ使用が許可されます。

 

ヘキサンは沸点が69度と低く加熱することでしっかりと除去できるので実際には脱脂加工大豆は安全なのです。

 

まとめ

  • 丸大豆まるだいず…何もしてない丸ごとそのままの大豆
  • 脱脂加工大豆だっしかこうだいず…丸大豆から大豆油を取り除いてタンパク質などの成分を調整した大豆

丸大豆しょう油

  • 丸大豆が原料
  • まろやかな香りと味わい

普通のしょう油

  • 脱脂加工大豆が原料
  • キレのある香りと強いうま味

今日は丸大豆しょう油と普通のしょう油について書きました。

 

原料の違いはありますがどちらも同じしょう油。

それぞれの特徴を理解して自分の好みにあった方を選べばOKです。 

 

どちらのしょう油も正しく保存しないと酸化して黒くなり風味も味わいも損なわれるのは同じです。

しょう油の保存方法については「和食の料理人が解説するしょう油の正しい保存方法」に書いてます。

 

ちなみに僕は…お刺身には普通のしょう油、煮物には丸大豆しょう油と使い分ける派です。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

丸大豆しょう油
キッコーマン
 
しぼりたて生醤油
キッコーマン